「スマホないと不便ですか?」

『大学から色々な情報が入ってくるからね…。
それとか友達から連絡が入ってこないのは大変だよ』

「友達から連絡入っているんですか?」

『何度も入っているはずだよ。既読つかねぇじゃん!って怒られているから』

「…電話の着信音以外、何の音も聞こえないです」

『本当どうしちゃったのかなー僕のスマホ』

「3年後に時空を超えるスマホって売っているんですか」

『そんなの売ってないって。世紀が変わっているならまだしも、3年後だし。
そうそう変わっていないと思うよ』

「市内に住んでいるんですよね?今周りどんな感じですか?」



興味が湧いた。

3年後どうなっているのか知りたいのだ。

今改装中の駅前のスーパーは出来上がっているのか、とか。



『どんな感じって…よくわかんないや』

「駅前のスーパー、出来上がってますか?」

『うん、出来上がっているよ。僕そこの3階のファミレスでバイトしているし』

「何て言うファミレスですか?」


春田さんが言ったのは、学校近くにはあるけどわたしの家の近所にはないファミリーレストランの名前だった。

近くに出来るのは楽しみだ。




「本屋ってありますか?」

『2階にはいっているよ。本好きなの?』

「好きです!」

『僕も好きだよ、本。最近どんなの読んだ?』

「柏(かしわ)ユメのカノンです」

『おっ!僕もカノン読んだよ!最後感動したよね!』

「はいしました!
わたしもあんな恋愛してみたいなぁって」

『良いよねぇ。僕にも良い人現れないかなぁ』

「春田さん彼女は」

『いないよ。心ちゃんは?』

「……片思いの相手なら、います」

『良いね片想い!叶うと良いね、その恋』

「はい!」



両親が共働きのわたしは、家に帰っても誰もいない。

だからずっと、わたしは春田さんと本の話に花を咲かせていた。

いつの間にか夕焼けは消え、一等星が煌めき始めていた。