「春沢が3年前、死んだの。
同じ事故に合ったお前は記憶喪失とか。
本当…誰のイタズラなんだろうな」
「……」
「この花、多分筧とか宍戸先輩だろ。
あのふたり、春沢と仲良かったから」
「……」
「お前も元気出せ」
太田に肩を支えられ、立ち上がる。
「…話したんだ、ここちゃんと」
「ここちゃん?」
「春沢心、ここちゃんと。
僕、電話で話したんだ」
「は?」
「…あの日も、僕は…いや俺は、話していたんだ。
心って名前、可愛いって」
「何?思い出したわけ?」
「1ヶ月前ぐらいにね……」
「あの調子悪そうだった時か?」
「うん。
全部、思い出した。
俺が3年前、春沢を誘って遊びに出掛けたのも。
この交差点で話した内容も、全部思い出した」
『以前どこかで出会ったことあるのかも』
『前世じゃない?前世』
俺は以前、3年前、まだ春沢が生きていて俺が記憶を失う前そう言った。
以前どこかで出会ったなんて、そんな話じゃなかった。
俺は3年前、奥村水樹として春沢の近くにいたんだ。
ずっとずっと、春沢のことが好きだったんだ。
「……春沢っ…」
「よしよし、泣け泣け。俺がいてやるから」
「俺があの時誘わなければっ…」
「自分を責めるな。お前だって苦しんだんだよ。
もう、誰もお前を責めないよ」
頬を伝った涙が、アスファルトにこぼれる。
何度泣いたって、春沢は戻ってこないのに。