1時間ほど考えてみたけど、頭が痛すぎて上手く働かない。
電話だけでもしてみることを決め、ここちゃんに電話をかけた。
『もしもし?』
いつも通り聞こえる、ここちゃんの声。
これがもうすぐ失われるなんて。
『水樹くん、久しぶり。
この間は切ることになっちゃってごめんね』
「ううん、平気。気にしないで。
それより、大丈夫?」
『うん。
水樹くん、時間ある?』
「今日はバイト休みなんだ。
どうぞ、好きなだけ話してください」
『じゃお言葉に甘えて』
ここちゃんは話してくれた。
片想いしていた相手を、吹っ切ることにしたことを。
彼の恋人になった親友と、本当の親友になれたことを。
名前は伏せていたけど、きっと片想いをしていた相手が宍戸先輩で、親友が筧さんだ。
「良かったね。親友ちゃんとますます仲良くなれて」
『うん。
これも奥村のお蔭だよ!』
「……奥村?」
出てきた自分の名前に驚く。
だけど冷静さを装った。
『うん。
バスケ部員で、親友と話し合うよう言ってくれた人』
「へぇ、良いことするね、その人。男?」
自分だとわかっていても、やっぱり他人事に思えてしまう。
かつての僕は、そんなことをしたんだ。
『男だよ。
あとわたし…奥村に、告白されちゃったの』
「告白!?返事は」
『していないよ。
まだ気持ちの整理とか出来ていなくって』
奥村水樹と僕は、皆が言うよう別人だけど。
どうやら好きになる人は一緒みたいだ。



