「佐渡さん、なんでこんなところに来てくれたんですか?」


目の前の背中に話し掛ける。

聞きたかった質問は、声が震えた。



「なんであんなこと、言ったんですか…?父にその場しのぎの嘘なんて通じません。このままじゃ、本当に跡継ぎにされちゃいますよ…。」


私と、結婚させられちゃいますよ…?


ありがとうございましたって。ご迷惑かけましたって。

お礼とかお詫びとか、先に言わないといけないことはたくさんあるのに。


嬉しかった、来てくれて。


でも、やっぱり。


どうして来てくれたの?なにを思って来てくれたの?

その思いが抑えきれない。


期待が抑えきれない。