「くっくっくっ…お前、口が強いんだな?」

いや、あれくらい普通でしょ。

女に喧嘩売られるなんて日常茶飯事だったし。

でも男なんかに頼りたくもないし。

出来ることは自分で。

そうやってきたら、ああなっただけで。

「とりあえず、早く社長室。どうせ仕事溜まってるんでしょ」

「はいはい。奈々が会社にいるって新鮮でワクワクする」

「あほか」

エレベーターに乗り込み、最上階の社長室へ。

ほんとこの人、最上階が好きだよね。

社長室へ入ると、すでに1人待機していた。

「社長、遅刻です…」

振り向きながら言葉を発しているこの人。

私を見るなり固まった。

ハニーブラウンのサラサラしてそうな髪。

茶色がかった大きな目の男の人。

女の人が似合うんじゃないかってくらい可愛い。

「そ、その方…まさか……」

「あぁ、蝶だ」

目をキラキラ輝かせて近づいてくる。

すごいギャップ。

「初めてお目にかかります。私、社長の第2秘書を務めております、西園寺 蒼聖(さいおんじ そうせい)と申します。貴方に会うのを夢にみておりました!」

深々と頭を下げ、嬉しそうに笑う。

笑顔が似合う人だなぁ。

「初めまして、初瀬 奈々と申します。先日から尊にお世話になっています。よろしくお願いします」

同じく私も深々と頭を下げる。

「頭をおあげ下さい。貴女に会えて光栄に思っております」

「蒼聖は前々から奈々ちゃんに会いたがってたんだよ」

「え、そうなんですか?」

そう尋ねると、目の色を変え語り始めた。