「初めまして、初瀬 奈々さん。私は宇野 愛佳」
よろしくね?とニコリと笑う愛佳さん。
何も言わずに会釈だけ返す。
どんな人か分からないし、警戒するに越したことはない。
紅瀬組に居るからには綾牙さんの味方をするに違いないだろうし。
「分からないこと、教えてほしいことは遠慮なく私に聞いてね?幼い頃から紅瀬組に居るから、そこらの組員よりは役に立つはずよ!」
「愛佳は5歳からの15年間、ここで暮らしてますからね」
「あー!朱雀さん、歳ばらしちゃダメ!」
女の子は歳ばらされるの嫌なのにーと頬を膨らませる。
私より2歳年上なのね。
「それと、欲しい物は愛佳に言え。そしたら俺か朱雀が調達する」
「自分で買いには行かせてくれないんですか」
「無理だな。脱走の可能性が少しでもある以上、護衛ありでも外に出ることは許さない。護衛をまいて逃げる恐れがあるからな。まぁ…そんな愚かな考えはもう捨てたと思うが」
ほんとに嫌味ったらしい。
私がどんな覚悟でここに居るかを知っているくせに。
「何をされようと自ら逃げるなんて馬鹿なこと、やるわけないでしょ」
「いい心がけだな。これからここで楽しくやってこうな?朱雀、仕事へ向かうぞ。愛佳、奈々のことよろしくな」
「任せて、綾さん!私がきちんと奈々ちゃんの力になって支えるから!」
部屋を出ていく2人に手を振る愛佳さんを見つめる。
これから私は、どうなるんだろう。

