「さて。俺がいない間の世話係、決定したか?」
「はい、若。愛佳が任せてほしい、との事なので彼女を世話係につけようかと」
「へぇ、アイツが。面倒見いいし、任せよう。早速だが呼んできてくれ」
「承知しました」
朱雀さんは一礼して部屋を出ていった。
「こっちが本性なんですね」
「あぁ、そうだ。とりあえず明るく笑っときゃ、コロッと騙される奴が多いからな」
久月の野郎も、と付け加えニヤリと笑う。
私が知らない尊と出会った時から演じてたってわけね。
どれだけ徹底してるの、この人は。
加えて頭の回転が早い分、とてもタチが悪い。
「妹の私を嫁にして何を企んでるんですか?」
「前も言ったろ、俺は嫁を貰えば組長になれる。ついでにお前をここに繋げておける。一石二鳥だ」
「妹である私は妻にはなれないのでは?」
「残念だな。親父はお前のことを認知していない。よってお前の戸籍は母親の元にある。つまりは俺らは戸籍上は赤の他人だ」
何もかも計算の上ってことね。
そのために母にお金だけ渡して契約させたのね。
ちょうどその時、襖が開いて朱雀さんと黒髪を後ろで束ねた綺麗な女性が入ってきた。
「失礼します。若、愛佳を連れてきました」
「久しいな、愛佳」
「お久しぶりです、若」
ニコリと笑うその女性はとても美しかった。
私なんかが足元にも及ばない。
「今日から俺の婚約者、初瀬 奈々の世話係を任せる」

