「瀧にね、相談があるとかで呼ばれてるの」

「手出されたらどうするんだ」

「馬鹿ね、人妻に手出すような男じゃないわよ。それに何かあったら瑠依も力になってくれるし、大丈夫!」

「楽か蒼聖連れてけ」

「倉庫まで蒼聖さんに連れて行ってもらうし、帰りもお願いするから大丈夫、安心して?」

そういうと渋々了承してくれた。

荷物をまとめて、病室の扉に手をかける。

「尊?」

「何だ?」

「…私は、ずっとずっと尊を愛してるよ。離れてても…ずっと」

「おい、奈々?」

「私を見つけてくれて、愛してくれて…ありがとう」

振り返らずにそういって病室を出る。

入口の方で煙草を吸っていた蒼聖さんに倉庫へ送ってもらいたいと頼み、そこへ向かう。

「つきましたよ。私もご一緒に行きましょうか?」

「いいえ、大丈夫です。蒼聖さん、尊がまた暴れるようなことがあったら、私の分もお願いしますね?」

「…どういう、ことです…?」

「私はもう…尊の側には居れないので」

そういって車を降り、倉庫がある方向へ向かう。

入口を素通りし、裏から抜けてあの公園へと向かう。

もう…さよならなんだね。

何もいわずに離れてく私を…どうか許して下さい。

例え離れ離れになる道だとしても、みんなが無事ならそれでいいの。

みんなが笑っていられるならそれでいいの。

私を忘れて、笑っていて下さい。

公園につくと、すでに綾牙さんが待機していた。

「…来たね。ちゃんとお別れはしてきた?」

不敵に笑い、嫌味ったらしくいう。

「じゃあ、行こうか」

尊、今でも貴方を愛しています。

離れないって約束…守れなかった。

離さないって約束、破っちゃったね。

でももう…私を忘れて幸せになって。

自分を傷つけた女のことなんか…憎んでいいんだよ。

ーーーーごめんなさい。

そうして、私は尊や皆と過ごしたこの街を去った。