「どうした?」

不思議そうな顔をして首を傾げる。

その顔がなんだか面白くて笑ってしまった。

「ううん、ただ尊の顔を目に焼き付けておきたくて」

「何変なこといってんだ。これから毎日見れるだろ」

「…そうね!それもそうだね!尊が居なくなりそう、って不安がまだ抜けないのかも」

そういって誤魔化す。

居なくなるわけねぇだろ、と笑って私を抱き締めてくれる。

いつもはそれだけで幸せなのに、どうしてこんなに胸が痛むんだろう…?

離れたく、ないよ…。

「ねぇ、尊?」

「ん?」

「…キス、して?」

どうした?と笑いつつも、私に優しくキスをする。

角度を変え、回を重ねる事に深くなる。

幸せな気持ちと、離れたくない気持ちがごちゃ混ぜになって涙が出る。

胸を鷲掴みにされたように苦しくなる。

いっそのこと突き放せたらいいのに。

「珍しいな、お前からキスしてほしいなんて」

「ただの気まぐれよ。寂しかったの」

「変に素直だな?まぁ、どんな奈々も可愛いがな」

そういって頬に軽くキスを落とす。

「寝てる間にキス魔になったわね?」

元々だ、と笑う尊につられて私も笑う。

「あ!そういえば聖藍の皆に呼ばれてたんだった!」

「あ?聖藍?」

聖藍、という単語にあからさまに嫌な顔をする。

私が聖藍に怯えてたのはもうずっと前の話なのに、未だに許さないらしい。