「尊、お見舞いに来たよ。麻酔切れてるんだから、早く目覚まして?じゃなきゃ、お腹の子が泣いちゃうよ?」

「それは…嫌、だな…」

え……。

驚いて尊を見ると、薄らと目を開け微かに微笑んでいる。

目が…覚め、た…。

「尊っ…!」

横になっている尊に覆いかぶさるようにして抱きつく。

皆も驚いて尊に駆け寄る。

尊は私の頭を撫でながらただ微笑んでいる。

「ただいま、奈々」

「…おかえりっ!」

私は泣きながら笑って尊の唇を奪った。

「きゃあ〜、奈々ちゃんダ・イ・タ・ン♡」

「楽兄?いい雰囲気なんだから茶化さないで」

そういって楽の頬をつねる雪乃を見て、皆で笑った。

「さて、尊も起きたことだし邪魔者は退散するわ〜♪」

そういい残して皆病室から出て行ってしまった。

「お袋も茶化すの好きだな」

呼吸器を外しながら溜め息をつく尊。

いつもと変わらない尊に何だか涙ぐんでしまって、流れる涙を拭う。

「…泣くな、奈々。心配かけてすまなかった」

私の頬を伝う涙を拭いながら、申し訳なさそうな顔をする。

ぶんぶんと首を左右に振りながら嗚咽を漏らす。

「怖い思いもさせたな。でも大丈夫だ。お前はお前が守るし、俺はお前を置いて絶対に死なない。それに、子供の名前一緒に考えるって約束もしたしな」

「覚えて、たの…?」

「当たり前だろ。俺だって産まれるなら今すぐにでも産まれてほしいくらい楽しみにしてるんだからな」

私の少し膨らんだお腹を撫でながら、愛おしそうにいう。

尊も楽しみにしてくれてたんだ。

それが嬉しくて、心からの笑みが零れる。

本当に、幸せだなぁ。

…この幸せを手放さなくちゃいけないのは、本当に辛いけれど。

でも…皆を守れるなら、それくらいどうってことないって思えるの。