「それに、確実に家を空けているタイミングを狙うなら、日中に事を起こすはずです。なのにいつもなら帰宅している時間帯に襲撃してきた…まるであの時間帯に帰ってこないのを知っていたかのように」

「久月組内部の襲撃だといいたいの?」

「違います。しかし、久月に限りなく近い者の仕業かと」

「…紅瀬、かしら?」

何もいわずに唇を噛む。

楽も紅瀬の仕業だと疑っていたのね。

まぁ、私は9割紅瀬だと確信しているけれど。

「椿さんも知っての通り、あのマンションの裏駐車場は、外から見ただけでは中に繋がっているとわかりません。裏通りに来る道も限られたルートです。それを知っているかのような行動でした」

これだけ不可解な点がいくつもあるのはおかしい。

紅瀬は…限りなく黒に近い。

「私も紅瀬がやった事だと睨んでいるわ。けど、憶測だけでは物事は進めることは出来ない。特に、休戦協定があるから迂闊には手は出せない」

下手したら大きな抗争に発展しかねない。

そうすれば、多くの命が失われることは確か。

無駄な血は流したくない。

でも…紅瀬がやったという証拠が出れば…やらざるを得ないのかも知れない。

パーティーの時も、綾牙は奈々に何かを話している。

そしてあの奈々の反応…何かが裏で動いている。

「紅瀬組…何を企んでいるのかしら」