「奈々、無事でよかった…」

そういって瞳に涙を溜める雪乃。

そんな雪乃を落ち着かせるかのように背中をさする。

「尊がね、庇ってくれたの。ほんと、どこまで男らしいんだか」

笑っていうと、ゆっくりと私のお腹に目を向ける。

「赤ちゃんは?大丈夫?」

「ふふ、うん大丈夫。痛みとかもないし異変もないし問題ないよ」

「そっかぁ…よかったぁ…。赤ちゃん、早く生まれるといいね!」

そういって私のお腹に耳を当てる。

それと同時にぽこっ、とお腹を蹴る感触。

「これ、って…!ねぇ今動いた!?動いたよね!?」

「ふふ、うん動いたわよ。雪乃が好きなのかしらね?」

そういうと、照れたように笑う。

この笑顔を壊すわけにはいかない。

もう、誰も傷ついて欲しくない。

「ねぇ、雪乃?私は雪乃や尊、楽や皆に会えて…本当に幸せよ」

「なーに?急にそんな事いっちゃって!明日雪でも降る!?」

「違うわよ。ただね、大切な人が側にいる、笑顔でいれるって…ほんとに幸せなことなんだ、って思ったの」

この笑顔を守るためなら、私はなんだってしよう。

尊が私を守ってくれたように、私も皆を守ろう。

私が紅瀬に渡れば、それだけで皆を守れるはず。

綾牙さんの事だから理由もなしに久月に手は出さないはず。

もう、誰にも壊させないから。

「雪乃は、ずっと笑っててね」

訳が分からないとでもいいたげな表情で首を傾げる。

気付かなくていい、気付かれない方がいい。

その後、明日に備え早めに就寝することにした。

サヨナラする決意を固め、眠りにつく。