「だから、若姐さんが気にすることないっス!俺らにとっちゃこの傷は誇りなんスから!」

そういって明るく笑う。

周りにいる組員さんもうんうんと頷く。

ゆっくり後ろを振り向くと、優しい表情をした司さんがいた。

つられて私も笑みがこぼれる。

何も心配することなんかなかった。

だって皆、こんなにも私を慕ってくれてる。

「でも、若姐さんじゃなくて奈々でいいですからね」

「はっ!つい…。とりあえず奈々さんに何もなくてよかったっス!今日はしっかり休んで下さいっス!」

ありがとう、と答えると満足そうに笑って走り去ってしまった。

「ほら、行くぞ。尊の部屋で雪乃と休むといい。明日呼びに来る」

「はい。ありがとうございます」

廊下を進み、少し行くとすぐ尊の部屋についた。

中には雪乃ではなく、蒼聖さんがいた。

私に気付き、深く一礼して真剣な表情になる。

「奈々さん、少しお時間よろしいですか?」

「はい。お話があるんですよね?」

「…若が撃たれ、今聞くのもおかしいと思うのですが…若を撃った者に見覚えはございませんか?」

ドキリ、とした。

まさか私が…紅瀬の生まれだとわかっているのだろうか。

それとも、ただ単に情報を集めたいだけなのか。

その意図が私にはわからなかった。

「…あまりにも突然の事で、顔を見る余裕がなかったです。お力になれなくてすみません」

そういうと、何か考えるような仕草をする。

「そう、ですよね。申し訳ありません、頭が混乱しているというのに。ご無礼、お許し下さい。お時間頂きありがとうございます。ゆっくりお休み下さい」

そういい微笑み一礼して部屋を出ていった。

蒼聖さんと入れ違いで雪乃が入ってきて、私に抱きつく。