「緊急事態なのは、わかってます。けれど何が起きてるのか…簡潔にでいいので教えて下さい」

「……どこかの組の構成員がここに攻めてきました。数としてもこちらが劣っていますので、少し苦戦しています。けれど、必ず奈々さんはお守りします、安心して下さい」

「尊がここにくると危ないんじゃ…」

「大丈夫です。あの方はそれくらいでやられるような人ではありませんよ」

そういって私を安心させるかのように微笑む。

それだけで、本当に心が落ち着いた。

そう、だよね…?

尊がやられるわけない。大丈夫。

そういい聞かせて落ち着きを取り戻そうと試みる。

「もうすぐ若も到着します。私は表にいる構成員を片付けてきます。若が到着するまで、絶対にここを動かないで下さい」

真剣な表情でそういい残し、ロビーへと急いで向かった陽さんの後ろ姿を見送りながら、尊に何も無いように祈る。

携帯を握り締め、ただただみんなの無事を祈った。

早く…早く…そう私の心が叫んでいた。

一刻も早く尊に会って抱きしめて欲しい。

無事を確認したい。

その時、駐車場のシャッターがゆっくりと開き、車のハイライトが暗い内部を照らす。

あまりの眩しさに目が眩んでよく前が見えない。