私が料理を本格的に勉強し始めて、初めて作った料理。

失敗して、お世辞にも美味しいとはいえない出来ばえだったのに。

尊は顔色ひとつ変えず、美味しいと全部食べてくれたっけ。

本当に嬉しくて、沢山勉強して尊の為に料理上手になるって決めたんだよね。

「ふふ、あの時と今とでは腕前上がってるかしら?」

ちょっとウキウキしながらキッチンへ向かい調理に取りかかる。

今日は楽も一緒にご飯食べるのかな?

念のため楽の分も作っておこう。

失敗して以来は様々な種類のメニューを読み込んで今では本も見ずに作れるようにまでなった。

私って案外記憶力がいいんだな〜なんてちょっと鼻を高くする。

調理を終えた時、私の携帯が震えメッセージを受信したことを伝える。

私の連絡先を知ってるのは極限られた人だし、大体は尊。

迷わず手に取り、メッセージを開くと予想通り尊からの連絡だった。

『悪い、今日は会議と商談、書類整理が詰まってる。
綾牙に呼ばれてるから仕事終わったらそのまま紅瀬に行く。
すぐ終わらせて帰ってくる。
少し遅れるが夕食はとる。待っててくれ』

あら、珍しい。

尊がこんな長文を送ってくることなんて滅多にない。

心配してくれてるのかしら?

わかった、無理しないでね。と返し、作った豚のしょうが焼きはフライパンに残しておく。

尊が帰ってから一緒に食事したいし、待っておこう。

そう思ってコーヒーをいれてソファに座る。

時計を見ると、もうすでに7時を過ぎていた。

帰ってくるのは10時くらいになるかな?

少しゆっくりして8時にはお風呂に入ろう。

テレビをつけてのんびりと尊の帰りを待っていた。


ーーー事件が起こるまで、あともう少し。