「と、とりあえず…私は家のこと済ませたいし留守番するから」
「…お前一段とケチになったな」
「ケチとかじゃないから」
口を尖らせていう尊を軽くあしらって皿洗いを始める。
その内楽が迎えに来て、会社へと向かって行った。
最後まで食い下がって私を連れて行こうとしたけど絶対首を縦に振らないから、最終的に尊が折れた。
「下の奴らの警護増やしとく。今回だけは我慢してやる」
そういって出て行った。
そんなに心配しなくても別に何も起きやしないのにね?
…でも、この時私は思いもしなかった。
この後、尊が危険にさらされることも
---私が壊れてしまうことも。
「よし、洗濯も終わったし部屋の掃除も完了!そろそろ夕飯の買出しに行こうかな?」
時計を見ると、もう4時になろうとしていた。
いつもより気合を入れて丁寧に掃除したからか時間かかりすぎちゃった。
薄いピンクのワンピースに黒のカーディガンを羽織る。
この2つは尊に選んで買って貰ったもの。
初めて黒と白以外の私服を買って少し心が踊ったっけ。
尊がお前ならきっと似合う、って買ってくれたんだよね。
尊は私自身も知らなかった一面を分かってくれてるんだ、って実感できて。
「ほんと、私って幸せ者ね?」
お腹を優しく撫で、愛しい子に語りかける。
早く生まれておいで、パパもママも待ってるよ。
財布とカードキーを持ち、ロビーへ行くといつもは1人しか受付の方にはいないはずなんだけど。
今日は5人もいる。
ちなみにロビーに来る間にも7人くらいには顔を合わせた。

