奈々side
「ん……」
目を開けると、いつもの寝室の天井が目に入る。
尊の温もりがないことに気づき、部屋を見渡す。
仕事?
ふわふわとした意識の中、おぼつかない足取りで1階へと降りる。
すると野菜と少しの梅の香りが私の鼻を刺激する。
これって、ご飯の匂い?
見てみると、尊がご飯を作ってくれていた。
尊のことだから、私に朝から動いて欲しくなかったのね。
変なとこ優しいんだから。
味見してみると、意外にも美味しくて。
2人でテーブルを囲んで食事した。
楽がいないせいか少し静かだけど、久々で新鮮味があった。
「あ、尊は今日仕事?」
「午前中はオフだな。午後は会議とか色々立て込んでる」
「帰り、遅くなりそう?」
食事する手を止め、尊の顔を覗き込みながら聞く。
そんな私を見た尊は、余裕のある笑みで意地悪なことをいう。
「寂しいのか?」
ニヤニヤとする尊は確信犯なんだろう。
ほんっっと意地悪。
「…どうでしょうね!」
ついつい意地を張ってそう答える。
いわなくてもわかってるクセに。
「素直じゃねぇな。久々に一緒に会社行くぞ」
「だーかーらー、仕事の邪魔になるし、私家のことしたいから留守番しとく」
「たまにはいいじゃねぇか」
眉を少し下げていうもんだからつい頷きそうになるけど、グッと堪えて我慢する。

