ギター王子とピアノ姫




「……ちゃん……Melloちゃん!」


「……え?何ですか?」


「えっ。何で敬語に戻っちゃったの?」


「あっ……笑大君か……」


「何でガッカリしたの!?」


「ち、違うっ!誰に話しかけられたのか
一瞬分からなかったから……」



誤解して、しゅん……となっている
笑大君に慌てて説明したら
『良かったー!』なんて急に
笑顔に戻るから


思わず『表情よく変わるねー』なんて
呟いてた私。


『俳優は表情も感情も
豊かじゃなきゃ!』って笑大君が
また笑うから



私も、つられて『そうだね』って
笑顔になった。



「良かったー笑ってくれたー!」


「?」


「なんか思い詰めたような顔してたよ?
俺は笑顔のMelloちゃんの方がいいな」


「……」



……また笑大君に助けられちゃったね。





◇◇◇◇◇



朝・学校。



「ヤバい!あと5分しかない!」



何で朝から全力ダッシュしなきゃ
なんないのよーーっ!



『勉強も出来る真面目な千葉朝音』
というレッテルを貼られてる以上
絶対にそのイメージは崩せない。


生徒からは嫌われている私だけど
教師からすれば
『扱いやすい生徒』だ。


成績も超優秀とは離れてるが
こう見えてクラス1位を獲れるくらいの
成績は維持している。


校則もきちんと毎回守るから
顔パスに近い。



何でそこまでして真面目な優等生で
居るのかって?



(学校で問題起こして芸能生活に
支障が出るのは嫌なんでねっ!)



ピタッ



「…………」



でも……もう今日からは
今までよりも平穏じゃない生活になる。



(担任、驚いてたな……)



ーーーーー30分前・職員室



「失礼し……」


「千葉ーーっ!!」


「うわっ。先生どうしたんですか」


「もう学校中、大騒ぎだぞ!
千葉がMelloで!しかも
ユニットデビュー!」


「うっ……」



まぁ予想はしてました。


校門通ってから周りの視線(特に女子)
刺すように痛いんだもん!



「何で千葉がMelloってこと
黙ってたんだよー!」


「すみません……事務所の方針なので」



それに面倒なことになるからです!


今みたいに!!



ふと気づけば他クラスの担任たちや
全然知らない教師たちまで
集まって来てて。


『凄いよなー!』とか
『学校の誇りだね!』とか言ってる。



「千葉は成績もいいし、校則守るし、
先生たちの言うこと聞くし、何より
げーーのーーじんっ!!」


「……はぁ……」



『げーーのーーじんっ!!』なんて
誇張した言い方とハイテンションぶりに
驚き通り越して呆れるしかないな。