どうしようどうしよう、と
うろうろしながら頭を抱える
私を見た笑大君。
でも笑大君は
この状況なのに楽しそうな笑顔だった。
「えっと、みんな!今日はもう退散するね!
集まってくれて本当にありがとう!
デビューシングルは、もうすぐ発売だから
それまで待っててね!
それまで月と太陽は歌とか演奏とか……
あ、あとコントも磨いて来ます!」
「私たちは芸人さんかいっ!」
「あっ!また叩かれたー!いたーいっ!」
「「あはははははははっ!!」」
最後は大爆笑に包まれて
ゲリラライブ(?)は幕を閉じたのだった。
◇◇◇◇◇
車内の帰り道。
「せっっっかくのゲリラライブで
何してくれてるのかな君たちは?ん?」
「「大変申し訳ございませんでしたぁぁぁっ!!」」
予想通り、社長(プロデューサー)から
雷を落とされました……はい。
私と笑大君は今にも泣きそうな顔で
何度も何度も頭を必死で下げる。
計画では突然現れてデビューシングルを
歌って、その後何も無かったかのように
黙って退散するっていうことに
なってたんだけど……。
「俺の計画メチャクチャだぞお前ら」
「プロデューサー、ほんっっっとに
ごめんなさい!」
「わ、私もパニックになって
ごめんなさい!」
「まぁまぁ。社長、本人たちも
反省しているみたいですし
いいじゃないですか」
「ったく……」
ガシッ!!
「「!?」」
ヒイッ!
社長、怖いです。
黒い微笑み浮かべながら
私たちの頭をホールドするとか
やっぱ私たち今日で死ぬんじゃ……
「お前ら!よくやった!!
だいせいこーーうっ!!」
「「は?」」
計画メチャクチャになったとか
言ってたくせに何ですかソレ
どーゆー心変わり?
嬉しそうに笑う社長の前で
私と笑大君はポカーーン状態
「Melloがライブ中は毒舌になるっていう
良い収穫もあったし♪」
「社長!忘れて下さい!
アレできっと幻滅されただろうし……」
私が笑大君を思わず叩いた時の
一瞬の沈黙を思い出して背筋がヒヤリ。
「あら、Melloも笑大君も知らないの?」
「何を?」
「ほら、コレ見て!」
そう言って鈴木さんから手渡された
スマホの画面を私と笑大君そろって
覗き込む。
「「速報。月と太陽ゲリラライブ……?」」
「あなたたちのゲリラライブでの様子や
感想がTwitterでトレンド入りするくらい
書かれてね?もう早速ネットニュースで
取り上げられてるのよ!」
「「へーーえ……」」
鈴木さんの興奮具合から喜ばしいこと
だとは分かるんだけど、なんていうか……
「実感ないや……」

