「井手…君」



「井手…君」



「井手君!起きなさい!」


耳元で、僕を呼ぶ大きな声と、甘い香り。


机に伏せていた顔をゆっくり起こすと、そこには、寿美子先生が腰に手をあてて立っていた。



そして、ちょっと膨れっ面。


「先生?」


僕は、今の状況が分からず、辺りをキョロキョロと見渡した。


いくつも並ぶ机、緑の黒板、風に揺れる白いカーテン、クラスメート、


そして、小柄な先生。


僕は、ようやく教室に居る事に気付いた。