ふむ。

とりあえず口の中にあるレアチーズケーキを咀嚼する間だけ考える。
レアチーズケーキだから、本当に一瞬。

「私にその気がない場合、賞を取ったからって付き合うのは嫌だし、もし仮にうっかり間違って私に気持ちがあるなら、取れなかった場合悲しむことになる。なぜ私がリスクを負わなければならないの?」

トモ君は楽しげに笑った。

「芽実ちゃんは僕のことが好きじゃないでしょう?それに賞も取れないから大丈夫だよ。だけど発表までの間はちょっと勝手に夢を見たい。それで発表が終わったら、もう付きまとわないって約束する。応援するつもりで相手してくれないかな?」

何かがチクッと刺さった。
どこに何が刺さったのかまではわからない。

「可能性はどのくらいなの?」

「万に一つあるかないか」

「ほぼないじゃない」

「だからそう言ったよ。でも、芽実ちゃんが僕を好きになる可能性よりは高いと思うんだ」

私を好きだと言う時と変わらない声、変わらない強さ、変わらないスピード、変わらない色で、どうしてそんな絶望的なことが言えるのだろう。

「いいよ、わかった。応援するつもりはないけどね。ちょっとくらいハラハラした方が仕事にも張り合いが出るし」

「ありがとう」

トモ君は心から嬉しそうに笑った。

万に一つあるかないかの可能性。
そんなしょうもないプレゼント、喜ばないでよ。