「あれ、頼のそれって」

「え?……あぁ」


やべぇ。

『ひっそり、食べて』そう言っていた花を思い出して、少し焦る。


涼にあげる"ついで"だって分かってても、やっぱ花からもらったって思うと食えなくて。

結局、部屋のテーブルの上に上げたままだったクッキーを見て、涼が固まった。



「頼も、誰かからもらったの?」


探るような涼の言葉。
都合のいい時は天然って言葉で済ませるくせに、こういう時は案外鋭いんだな。


せっかく、ひっそり食おうと思ってたけど。


……やーめた。
だって、涼に遠慮してやる筋合いないし。


「花にもらった。涼は?」

「頼も三津谷からもらったんだ!俺も三津谷とクラスの女子から」



"三津谷とクラスの女子"

その言葉に、花だって涼にとっては"クラスの女子"だろ?なんていちいち嫌味を思って。


俺がどんなに望んでも見れない、花がいる教室の風景にさえ嫉妬する。


「へぇ、で?大量にもらいすぎたから俺にももらえって?」

「1人からもらったら、断りづらくて。結局みんなからもらってたら、こんな数になっちゃったよね」


ヘラヘラ笑って俺を見る涼。