だけど、きっと。
そんなの私の都合のいい勘違いでしかなくて。



「もう、俺がいなくても大丈夫だろ」


「……え、」



パッと私から離れた頼くんの体温。
髪を梳く手を恋しく思う。


「涼もきっと、花のこと気になりだしてる頃だと思うし」


「頼くん……?」


「俺の役目はここまで。あとは、自力で気持ち伝えれば届くんじゃねえの」


「違っ、頼くん……私、」


「大好きな”涼くん”に幸せにしてもらえよ」



フッといつもの優しい笑顔を降らせた頼くんは、簡単に私に背を向けて歩き出す。


まるで、ほんの少しでも期待した私に牽制するように。


お前のことなんてこれっぽっちも好きじゃない。
階段を駆け下りていく頼くんの冷たい背中が、そう言っている気がして。


頬を伝った冷たい感触に、自分が泣いてることに気付かされる。


私は頼くんが好きなのに。
涼くんに幸せにしてもらえ、なんて。


「頼くんこそ……バカ、なんじゃね」



嗚咽が邪魔して、上手く言葉にならない。
こんなに好きにさせておいて、今更突き放さないで欲しい。


どんな形でもいい。
頼くんとの繋がり、失くしたくないのに。