困ったような……けど、まだ少し眉が険しいままの椎名くんは、そんな曖昧な表情で再び言葉を紡いだ。
「お前が、泣いてるんじゃねぇか……って思ったから」
それは……優しさなのかな、椎名くん。
例えその不器用な言葉がその場しのぎでも、こんな風に私に言ってくれる人は今までいなかったから。
泣いていても、笑っていても、不気味……。
だから、私が椎名くんの言葉が優しさなんだって捉えることにも、こうやって躊躇(ちゅうちょ)してしまうんだ。
「………泣いてないよ、」
素直に口から零れた言葉。
目の前に立つ椎名くんの真剣な眼差しは心なしか緩んでいて。
