そこまで言い終えれば、少しの間、全て春風さんの嘘だったことに気づいたのか、椎名くんは大きな溜め息をついて小さく舌を打った。



「春風のヤツ……。オレは、お前がまた今朝みたいに無抵抗なままなんじゃねぇかって思ったから」



ブレザー越しに強く掴まれた二の腕から椎名くんの手が離れていく。


ふと、見上げた横顔………。


窓から射し込む光に照らされて、じんわりと汗ばんだ椎名くんの肌。


自惚れにも程があるっていうのに、もしかしたら走ってきてくれたんじゃないかって、そんな夢を見てしまう私は心底バカなのかもしれない。