「い、今……王子の口から、何か聞こえたような」
「……嘘!椎名くんが、魔の手にかかったなんて!!」
「なにこの悲劇!!わたし、幻聴すら聞こえた気がするんだけど!」
どよめきはさらに巻き起こり、もう誰が何を叫んでいるのか不明な程騒がしくて。
だけど、まるで夢の中にいるような錯覚を抱く私は、ただただ距離を縮める椎名くんを見上げるしかない……。
「………椎名、くん?」
夢じゃないと確認するように名前を呼べば、私の目線に合わせるように顔を近づけてくる。
ーーードキッ
ブラウンの瞳を緩ませた椎名くんは、鼓動の音がうるさく響く私の耳元にそっと唇を寄せた。
「うるさいから、オレと一緒に来て?」



