* * *


ーーー“楓は?どう思う……?月城さんのこと”


弾けるように飛び出したオレが空き教室へ駆け込んでも、既に誰もいなくなったあとで、微かに開け放たれた窓から入り込んだ三月の風が吹き抜ける。


仕方なく、イベントへ出る前にと足を向けた空き教室。


静寂の包む中にはオレ一人しかいなくて。


月城の姿と引き換えに机の上にある黒いノートがぽつりと置き去りにされていた。


いつも、月城が大事そうに抱えてる宝物みたいなノート。



ーーー“呪いをかけたいのではなく、出来れば話がしたいだけで。それに、とっ、友達になりたくて……”



やけに喉の奥が熱くなって、そのノートから目を伏せるように視線を逸らそうとすれば。



まるで、見計らっていたかのように春の息吹がノートをパラパラと捲る。