「……椎名くん、」



そうすることで自分の心を守れるならそれでいいと言い聞かせて、諦めてきたのに。


どうしてお前の声は……。


 
「………私は、椎名くんの背中を押したいよ」



背中に届いた迷いのない声は、出口の見えない暗闇の中でも。


ーーー全てを忘れてしまいたいと思う心に、月城の声だけが鮮明だった。



だからだろう……。

諦めたくないって思ってしまったんだろう。


ーーー“椎名くんに、笑っていてほしいから”


お前の言葉は、優しく届くから。


もう一度、未来を描いていけたらって、願ってしまうんだ。