涙に濡れる瞳で、三条さんは、自分の描いた絵を暫し見つめる。



「……実は、この絵はーーー」



ふわり、と内側にカールされた柔らかい髪を揺らして振り向いた三条さんが、私にこの絵に籠められた思いを教えてくれた。


涙に濡れた三条さんの揺るぎない決心。



「わたしの色……楓にも、見てほしいんだけどね」

 
「っ、……この絵は、明日の創立記念祭のためのものですか?」


「……うん。先生が今日、創立記念祭で、美術室の前の廊下に飾ろうって言ってくれて」



そう言った三条さんは、あれだけ怖がっていた私を見つめると、柔らかな笑みを見せてくれた。



ねぇ、椎名くん……。


こんな素敵な思いを知らないままでいるのは、もったいないよ。


だから、どうか、椎名くんにも届いてほしい。