「楓ー、隼人ー!そろそろ帰ろよー」
14才の秋。
絵の具一式を抱えた紅葉が手を挙げて笑う。
基本的には誰とも深く関わりを持たないと決めていたオレの世界は、隼人と紅葉がいたら、それでよかったんだ。
ーーー壊れることのない世界に、忍び寄る影の気配すら、オレは気づかずに。
「ねぇ……わたしの色って、何色だと思う?」
三つに伸びた影法師。
真ん中を歩く紅葉が憂鬱そうに眉をしかめた。
「わたしには色が無いってお父さんに言われて……どんな絵を描けばいいかもうわからないんだ」
ぽつり、と零れた声。
県の絵画コンクールで金賞を獲った紅葉は、それを使命のようにわけのわからない絵をキャンバスに描(えが)き続けていた。
楽しむことも、笑うことも、諦めたように。
ただひたすら金賞というもののために筆をとる紅葉。



