「……どうして、楓を責めるの?」
突然、教室のドアから顔を覗かせ、優しく語りかけたのは、真っ直ぐにオレを見つめた紅葉の声だった。
交わされた視線。
その印象的な大きな瞳は純粋で、汚れもずるさもなくて、ただただ綺麗で……。
そう思うオレ自身の瞳は、もう誰も信用出来なくて、黒に染まってしまったんだろう。
「楓は、ただその場にいただけだって言ってるよ?何も、してないんだよ?」
「あのね、三条さん……アナタのお父様も、とても心配しているのよ?もしかしたら、次は、アナタがーーー……」
「わたしは信じてるよ」
たった一言。
なんの躊躇いもなく口にした言葉。
“信じてるよ”
雪のように凍りついた心が、優しい声で、溶けていく。



