ごめんなさい、と心の中で謝った。

悪意があったわけではないけれど、せめて今だけは椎名くんに声をかける行為を私に譲ってほしかった。



「………バカ。それじゃ汚名返上どころじゃねぇだろ」



投げ掛けられた言葉にゆっくりと足元から視線を辿れば、そこには不機嫌に私を見つめた椎名くんが立ち尽くしていた。



「なにしてんだよ……」



呆れたような、でもどこか怒っている声。

それなのに久しぶりに感じる椎名くんの声を聞いたら、喉の奥が熱くなって、涙腺が緩んでしまいそうだ。



何か言わなきゃと思っても言葉が出てこない。

やっと視線が交わされたのに……。

早く言わなきゃ、椎名くんは行ってしまう……。

キャラメル色の髪が視界の隅で揺れる。



「椎名くんは、嘘つきです……」



やっとの思いで出た言葉に自分で驚いた。