「描かないんじゃない。描けないんだよ、紅葉は。あの日からずっと描けないんだ……」
え……?
力なく発した国崎くんは画集にそっと目を落とす。
あの日から、三条さんはもう絵を描けない?
「お前は知らないかもしんねぇけど、紅葉は子供の頃から絵画コンクールで何回も金賞とってた」
「コンクールで、金賞……」
「だけど、紅葉はあの冷酷な親父に……“お前には自分の色がない”って言われて。それで……」
言いかけて私の顔を一度見ると、ハッとしたように口を閉ざした国崎くんはバツが悪そうに顔を背けた。
「……そんな画集持ってても、紅葉はどうせキャンバスとにらめっこしてるだけだ。やめとけ」
やめとけなんて言っておきながら、国崎くんは、画集から目を離せずにずっと見つめている。



