その眼差しを見つめていたら胸に蔓延(はびこ)る不安が唐突に沸きだして、同時に疑問が口を衝いて出た。
「ねぇ、椎名くんは、どうして私に声をかけてくれたの?」
「……は?」
「この図書室で、偶然、私がこの窓辺にいて……椎名くんは私の名前を知ってくれていた……」
「……っ、」
“偶然”なんだよね?
弾けたように顔を上げた椎名くんの瞳が、苦しそうに歪んだ。
それを視界に映せば、冬休みの出来事に心を痛めて傷ついた椎名くんの姿と重なって。
「それは、偶然……だったのかな?」
“それ以上、聞くな”、と。
椎名くんの瞳が私に伝えてくる。
それでも、独り言のように発した私はーーー、
国崎くんから受けた忠告も、関わるなと言われても、私の心はそれを拒んでいるのが自分自身でわかった。
そして、その時、図書室の扉が開いた………。