向かい合った正木さんがそう言うと、口ごもる私と顔を合わせる。


私、だから………。

それは、違うよ正木さん。


仮に椎名くんが私に優しいんだとしたら、それは訳ありの関係があった延長戦みたいなものが関係しているだけで。


恋愛ごっこのほんとにオマケみたいな日々が、たまたま、続いているだけ。


だから、私にだけ優しいなんてことは思っちゃいけない。



「わたしはわかるよ。椎名楓が、優しくしたい気持ち……」


「優しくしたい気持ちって……、」



言い聞かせる私に、正木さんは照れたように笑うと、紅茶色の綺麗な髪を耳にかける。



「誰かにそばにいてほしいって思った時には、不思議ともう、公花はわたしのそばにいてくれた……」



騒がしい教室の中、正木さんの澄んだ声が、心地よく耳に届いて。