バレンタイン……。

椎名くんにとっては一年で一番憂鬱な日となってしまってるのかもしれない。



「椎名楓って……すごいモテるのに、まるで興味がないのね?告白も、一度も受けたことないし?」



私の机に椅子を並べて向かい合う正木さんが、不思議そうに小首を傾げる。



「そ、そうだね……。椎名くんは、煩わしいことを、嫌ってるみたいだし」


「ふぅん。でも、公花とは関わるのに?」


「……えっ、」


「冬休みもわたしが伝言を頼んだ時、しっかり任務を果たしたじゃない?本当に関わりたくないのなら、冷酷だって言われるように、無視をすることも出来たのに……ねぇ?」



“公花”と呼ばれて嬉しいのに、椎名くんの話題になれば、胸はチクチクと痛みを覚える。



「公花は、どう思うの?椎名楓のこと」


「……どうって。椎名くんは……冷酷じゃないと思うよ。本当は、優しいというか……、」


「うん。だから、それは公花には優しくしたいからじゃない?」