「…………あの人、またそんなこと言ったのか」
「知ってるの？あの男の人……っ、あの人は……、」
落胆する国崎くんの力ない声を聞いた私は、動揺を隠せずに、気づけばそう口を衝いていた。
「……もう一人。オレらには幼馴染みがいる。そいつの……親父だよ」
ーーーもう一人の幼馴染み？
告げられた事実に何も返すことが出来なかった。
国崎くんの、ただならぬ雰囲気にそれ以上追求することはせず、口を閉ざす。
「はっきり忠告しておく。お前が楓を好きになっても、傷つくだけだぞ……」
「……、」
“心配”と“忠告”……。
そんな気持ちが伝わる口調になおさら言葉が見つからない。
揺るぎない瞳は、そんな私を見つめて答えを待っているみたいで、深く痛む胸に苦しさは募るばかり。
