「……梶先輩、ありがとうございます」



私の声を合図のように階段を降りていく梶先輩の背中を見つめて、さっきよりもずっと軽くなった足を進める。



「月城……」



届いた声にゆっくりと振り返ればーーー、



「下向いて歩いてると、転んじゃうよ?」



温かい居場所をくれた人は、やっぱりどこまでも穏やかに微笑んでくれた。



「………はい!」



太陽の陽射しで輝く階段を、私は足早に登っていく。


振り向かずに、顔を上げて、前だけを見つめて。


世界は、自分が思い描いていたよりも、光に満ちているような気がした。