「月城さんの連絡先を聞いておけばよかったって、後悔した……」


「わ、私こそっ!でも、椎名くんから来れないこと聞きました……正木さん、うちにも電話をしてくれたみたいで。ありがとうございました」


「……よ、よかったぁ。月城さんを傷つけたかと思っていたの。ごめんなさい。伝言を頼むことしか思い付かなくて。でも……椎名 楓なら、きっと全力疾走して向かってくれると思ったから」


「へ……?」


「ふふっ。だって、椎名 楓は月城さんのことが好きなんだもんね?」


「っ……それは、あの、噂というか……、」


「確かに噂だけど……。でも、椎名 楓は月城さんには優しいから。見てればわかるんだけど?」


……と。

正木さんが椎名くんへとイタズラな瞳を向ける。


女の子の恋に濡れた熱い視線から逃れるように、机に頬杖をついて遠くを見ている椎名くん。


キャラメル色の髪がふわりと揺れて、不意に目が合えば、どちらともなく逸らした視線に鼓動が揺れるのを感じた。