「……本当にごめんなさい!!」


「そっ、そんな……頭を上げてください……!」



冬休みが明けた寒さの続く初日。

教室に入る私目掛けて飛んできたのは、悲痛な顔をした正木さんだった。


“不気味ちゃんの怒りを買った秀才が、黒魔術執行を逃れるため謝罪してるんだよ!”


……そんな、根も葉もないことを口にして、好奇の目を向けるクラスメイトなど気にもしていない正木さんは、恐る恐る頭を上げた。



「……あの日、どうしても行けなくなってしまって。わたしの家ね、両親がものすごく厳しくて……勉強に専念するようにって、しばらく学校以外での外出も禁止になったの」


「そんな……っ、」



名門校に通っていた程秀才な正木さんが抱える深い事情に、思わずかける言葉が出てこない。


不謹慎かもしれないけど、それにも関わらず私を映画に誘ってくれたことが嬉しかった。