それは、バスケ部に入部してから、何度か聞いたことがあった話。
東雲中には唯一、あの梶先輩が本気を出しても勝てないプレイヤーがいるらしい。
えと、確か………、
「“ゲームを支配する男”……なんて、アイツは呼ばれてる。ムカつくヤツだよ。可愛いげも何もあったもんじゃない」
ゲームを支配する、背番号7番……どんな人なんだろう。
「……中学からバスケを始めたヤツなのに、一度も勝てなかった。それって、俺としてはかなりダメージで。……それから俺は、アイツとの練習試合にすら何かと理由をつけて出なかった。悔しかったからね。自分が負けるってわかってる勝負に挑んで、改めて敗北を味わうのが怖かった……」
全てを吐き出すように話し終えると、梶先輩は悔しさを空に投げて一度大きく宙を仰いだ。
「……でも俺、もう自分から逃げないよ。正々堂々と勝負して自分と向き合うって決めたから。明日、練習試合がある。見に来てくれないか?」
迷いのない瞳が、その真剣さを伝えてくるから、私はその瞳を見つめ返して頷いた。



