くしゃり……と。

私へゆっくり伸ばされた椎名くんの大きな手は、柔らかく、とても優しく私の髪を撫でた。


その一連の動作が、私の目にはスローモーションに映り込んだ。



「………ありがとな」



ーーー私は、一瞬、呼吸すらも忘れた。


椎名くんが、あんまり優しく笑ってくれるから。

   
ふわりと明かりが灯ったように瞳を柔らかく緩めると、そっと囁くような声で顔を寄せた。


作り物の光より数倍輝きを放つブラウンの瞳の中に、頬を赤らめる私をはっきりと映して。


こんな優しい笑顔を、私は初めて見た……。



「……っ、ううん。私は、何も………、」



再び早鐘を鳴り出した鼓動はもう止むことを知らず、寒さで冷えた私の体温は激しく上昇していく一方で。


何度深呼吸を繰り返しても治まることのない鼓動。