同時に女の人のそばへ駆け寄ってくるスーツ姿の男の人は、険しい面持ちだった。
「あっ、あなた……っ。私、偶然、ここで楓くんに会って……」
「なに、楓……だと?」
私のお父さんとは対照的に凛々しくて、背だって椎名くんに負けないくらいあって、どこかの有名企業の社長さんですよ、と言われても頷ける容姿。
だけど、その鋭い目は少しも穏やかではかった。
「お前…………」
一瞬、目を見張った男の人の酷く無機質で温度のない低い声が、冷酷さを放つその目は、まるで椎名くんを憎むように捉えている。
驚いた私が椎名くんを見ると、そのブラウンの瞳は完全に色を失っていた。



