「正木から電話があった。今日は行けなくなって、お前の家に電話したらもう出たあとだったからって……」
「ま、正木さんが………?でも、だからって、椎名くんがここに来る必要なんて……」
「全くだ。アイツ、むちゃくちゃなんだよ。お前のこと好きなんだったら……何とかして伝えてくれって。ったく、オレにどうしろってんだよ……」
「……、」
「……大体、連絡先くらい交換しとけよな」
舌を打って悪態ついた椎名くんは、真っ白はダウンジャケットの袖口で額にうっすらと浮かぶ汗を拭った。
そんな椎名くんにこんなことを言ったら怒るかもしれないけど、こうして来てくれたことが私は嬉しくて堪らないって今とても強く思ってる。
ねぇ椎名くん、こんな煩わしいことに巻き込まれてるのにどうして来てくれたの?
煩わしいことから解放される一時の休息なのに。



