私の肩にもたれかかるようにした椎名くんの声が、ずっと心の中にあった重石を軽くしてくれる。


ーーーもう、誤魔化したくない。


あの頃の苦い記憶から目を逸らすのはやめて、ちゃんと伝えたい気持ちを言葉にしよう。


そう思えたのは、椎名くんが私と一緒にいてくれたから。


怖くても、拒絶されてもいい。


一歩踏み出さないと私はこの先も変われないまま。


だから“ありがとう”……と、口にしたかったのに。



「………お前は、オレとは違う」


「……っ、」



悲しく揺れる椎名くんの声に、胸が張り裂けそうになった。


気づけば、私は椎名くんの背中にそっと腕をまわして、抱き締めていた。


消えてしまいそうな、クールな王子様が、何を抱えているかも知らずに。



暗闇に包まれていく窓の外では、雪がちらついていた。