二十世紀が終わり、新しい百年が始まった。
二〇〇一年、僕は大学生になった。今から二十五年前のことだ。。

故郷の富山から単身上京し、獣医学部のある千葉の大学に通い始めたあの頃。一人息子の僕は悠々自適な暮らしをしていた。
バイトもせず、クラスの仲間と遊び歩き、ちょっと感じのいい女の先輩と友達になったり。何かと用を作っては、街をうろうろとぶらついて、ファミレスやコーヒーショップをめぐり、書店やCDショップをひやかしてまわる。そんな些細なことが楽しかった。

大学はまだ教養科目を学んでいた。簡単なことばかりで、出席さえやりくりすれば単位がもらえることはすぐに理解したので、あとはサークルやクラスの友人と空いた時間を有効活用する。
代返、自主休講は当たり前。なにしろ誰も咎めない。
朝まで仲間と笑いあい、深夜の学校に忍び込んだこともあった。
今思えば、大学デビューの遅れてきた悪ガキだ。

僕ははじめての自由に夢中になった。
千葉県のその街は、田舎育ちの僕には充分すぎる都会でちっとも退屈しない。
山しかなかった実家と違い、僕が欲しいと思うものはなんでもある。
若者らしく都会の水に首までつかり、いわゆる楽園の日々の只中にあった。すっかり一人前の大人気分だった。