「君の名前は?」


名前…。


横に首を振る。


「そっか。何歳でどこに通ってるかわかるかい?」


何歳…学校…。


手の大きさ的には中学生か高校生?


そんな推理は出来るのに、本当のことがわからない。


「わから…ない、です」


「うん、辛いのに答えてくれてありがとう」


ポンっと頭を撫でられる。


その優しい手に、緊張していたのが少し楽になった。


「君はね、赤澤 星南ちゃんって言うんだよ。高校1年生の16歳だ」


赤澤…星南。


自分の名前のはずなのに、ピンとこないのはなんでだろう。


それは本当に私の名前なの…?


「先生…」


おじいさん、もとい先生に声を掛けたのは、私が目を覚ました時にソバにいた綺麗な女の人。


その横にはこれまたかっこいい男の人が立っている。


「…外傷に目立った怪我はあまりありません。ただ、落ちた時に頭を打ったようで…」


「記憶喪失。ということですか?」


「星南の記憶は戻るんですよね?」


「ええ、いつかは戻ります。それが明日なのか、1年後なのか。それは私にはわかりません」


「…わかりました」


ぼーっと先生と女の人の話を聞く。


私は…記憶喪失だから何も覚えてないんだ。


楽しかったことも、嬉しかったことも。


何一つ覚えていない。