「だけど、待っても紅炎が現れることはなかった!だから姫という位置で紅炎が現れるのをずっと待ってたのよ!!ずっと!だけど現れたのはもう1人の姫だった!!」


…え?


〝もう1人の姫?〟


その言葉に疑問を抱いたのは私だけではなく、moonのみんなも同じように疑問に思ったようだった。


だって、顔合わせの時にいたのは幹部のみんなに、姫だった栞ちゃんだけ。


もう1人なんていなかった。


「もう1人姫がいるのか?」


「…姫なんていないよ」


紅蝶の幹部である晴天がそういうならそうなんだろう。


だけど、今の間は一体?


「嘘よ!!もう1人いたわ!私よりあいつばかり優先して!!庵も!一応私が彼女なのに!あいつの話ばかり!!」


顔を真っ赤にして叫ぶ姿は、顔合わせの時にみた栞ちゃんとはかけ離れていて。


その叫びを、私は静かに聞くことしかできなかった。