天国の不動産






「そうですか。わかりました。では、逢坂湊さん。死後4年と8日後の生界へ、行ってらっしゃいませ」




日常に戻りたくて毎日門をくぐった。




12時間の生界で過ごす日常と、天国で過ごす非日常が、いつの間にか僕の日常になっていた。




変わることが怖いと言いつつも、いつもいつの間にか変わっている。




何が怖いのか分からない。




漠然とした何かが分からないから怖いのだ。




動かない心臓が激しく鳴り響いている気がする。




門をくぐればそこは、4年間変わらず事故現場だった。




少しだけ凹んでいたガードレールも綺麗になっている。





今日は最後の生界。




葵を見守るのではなく、自分が生きた日常を見て回ることにした。