大学は相変わらずほとんどが知らない顔で、ほとんどが暇そうに過ごしている。
そして、ほとんどが僕の話をしているはずがなかった。
見知った顔も見かけたが、スマートフォンを弄りながら、お互い興味がなさそうに会話を交わしている。
しかし、そこに彼女の顔はなかった。
時間通りのチャイムと同時に、教授が講義室に入ってくる。
誰も注目していない講義がどんどん進められていく。
その時、マイクを通している教授の声が響く中、気になる言葉が耳に入ってきた。
「葵、今日も来ないね」
言い出したのは、彼女とたぶん最も仲が良かった友人で、確か名前は有明なな。
その隣の女子が「まあ、彼氏死んじゃったからね、そんなすぐ学校来れるような精神にならないでしょ」と付け加えた。
「毎日湊くん事故ったとこに行ってるらしいよ」
「そうなの!?引きこもってるわけじゃないんだ」


